これまで住んでいたベトナムを離れ、日本での生活がはじまると、ことば、文化・習慣、周りにいる人などが変わり、心や からだがつかれやすくなります。
日本語がうまく話せなかったり、家族や友だちと離れてさみしい思いをしたり、しごとでつらいと思うことが続くと、心が 疲れて病気になることがあります。
こころの病気は、誰でもかかる病気です。からだの病気と同じように、「おかしいな」と思ったら、早めに相談しましょう。 ここでは、こころとからだを元気に保つためにどうしたらいいか、こころの病気にはどんな症状があるのか、こころの病 気になったときどこに相談すればいいか、について説明します。

5. 1. 日本の生活になかなか慣れません。会社の人たちの流れについていけず、毎日が不安 です。なぜでしょうか?

• これまで住んでいたところを離れると、ことば、文化・習慣、周りにいる人などが変わり、心やからだがつかれやすくなります。これは、カルチャーショックといって誰にでも起こることです。
• 日本語がうまく話せなかったり、家族や友だちと離れてさみしい思いをしたり、仕事でつらいと思うことが続くと、心やからだが疲れて、病気になることがあります。
• 同じ国から来た人とつらいことや悲しいと思うきもちを共有してみましょう。会社の同僚や日本人の友達をつくったり、日本の文化にふれることで、日本の生活に慣れるきっかけができるかもしれません

もっとくわしく調べる!

JITCOホームページ 「こころの健康・みんなの笑顔」
(ベトナム語版)

5. 2. 心やからだが疲れると、どんな症状がでますか?

心やからだがつかれると、ストレス反応と呼ばれる次のような症状が出ることがあります。
からだ: 頭が痛い、お腹が痛い、食欲がなくなる、便秘や下痢、ねむれない
こころ: 気分が沈む、やる気が出ない、イライラしやすい
行動: 食べ過ぎる、お酒を飲みすぎる、買い物をしすぎる、遅刻をする
認知: 悪いことばかり考える、周りの人が敵に見える、嫌がらせを受けていると感じる
この状態が続くと、病気になる場合もあります。ストレス反応に早めに気づいて、からだを休める、よく眠る、誰かに相談することで、病気になりにくくします。

もっとくわしく調べる!

JITCOホームページ「こころと身体の自己診断表」 (ベトナム語版)

5. 3. ストレスで症状がでたら、どうすればいいですか?

つらい症状は薬で減らせることがあります。例えば、眠れなくて疲れがとれず、仕事中にぼーっとしてしまうときは、眠れる薬を使うことで、体調や集中力も回復します。まずは精神科/心療内科を受診してみましょう(➡ 5.8をみてください)。

5. 4. 気分の落ち込み、やる気がでない、朝起きられない、眠れない、食欲がないなどの症状 が続いています。どうしたらいいでしょうか?

• 自分のきもちや行動をコントロールできなくなっているので、うつ病かもしれません。心療内科か精神科を受診してみましょう(III-8をみてください)。
• うつ病の場合は、からだの症状、例えば、頭の痛み、吐きそうなくらい気持ちが悪い、胸の痛み、手足のしびれが現れることもあります。薬をのんでゆっくり休むことが必要です。

5. 5. 自殺したいというきもちがあります。どうすればいいですか?

• 自殺したいというきもちは、うつ状態(うつ病)の時に出やすいです。まず、そのきもちを信頼できる人に話しつきそってもらって心療内科や精神科を受診しましょう(➡5.8をみてください)。

• 自殺したいというきもちが強い場合には、入院することがあります。相談できる人が近くにいないときは、【相談先リスト】にある窓口からベトナム語で相談してみましょう。

5. 6. 急に周りの人たちがこわくなり、悪口を言われている感じがします。実際に声も聞こえ ます。どうしたらいいでしょうか?

• 誰かに悪口を言われている感じがするのは「被害妄想」、周りに誰もいないのに話し声や変な音が聞こえるのは「幻聴」という症状の可能性があります。こころやからだが疲れているときにもみられる症状です。
• 症状がくりかえし起こる場合、こころの病気かもしれません。心療内科や精神科を受診してみましょう(➡ 5.8をみてください)。

5. 7. やることや言うことが前と変わってきて、心配になる同僚がいます。精神科への受診を勧め ましたが、嫌だと言われました。どうすればよいですか?

• まずは会社の相談窓口の人など、近くに頼れる人がいれば頼りましょう。日本語がわかる人に、以下の【もっとくわしく調べる】をみてもらい、近くの相談窓口を調べてみましょう。どうしていいかわからないときは、【相談先リスト】にある窓口からベトナム語で相談しましょう。

• 自殺につながるようなことをする、興奮する、物を壊す、人を傷つける、などがある場合は、警察を呼びましょう。心療内科や精神科の受診は ➡ 5.8をみてください。

もっとくわしく調べる!

コラムのつづき

あなたの心は、いま、どんな状態でしょうか?

次の15の質問に答えてみましょう。いくつ「はい」がつきますか?

  はい
1 寝ようとしても寝つけなかったり、寝ていてもすぐ目がさめてしまったり、長い時間寝たのに起きるのがつらかったりすることはありますか?  
2 気分が落ち込んだり、ゆううつになったり、なんの希望も持てずにすべてをあきらめた気持ちになったりしたことはありますか?  
3 理由もなく疲れたり、元気がなかったりしますか?  
4 なにも食べる気がしなかったり、食べだしたらやめられなかったり、お酒を飲みすぎたりしますか?  
5 頭がいたかったり、吐き気がしたり、めまいがしたりしますか?  
6 なかなか集中できず、目の前のことに身が入らなかったり、気づいたら違うことを考えていたりしますか?  
7 あせったり、イライラしたりしやすいですか?  
8 職場のなかや、まわりの人たから離れて、自分ひとりだけで立っているような気持ちがしたり、仲間がいなくて一人ぼっちと感じたり、助けがなくてただ一人でいるような気持ちがしますか??  
9 緊張したり、不安な気持ちがしたり、ハラハラする気持ちがしたりして、自分で自分に困ることはありますか?  
10 心臓がどきどきしたり、息が苦しくなったりしますか?  
11 死にたいと思ったり、自殺を考えたりしますか?  
12 「自分はダメな人間だ」「家族をがっかりさせてしまった」と、自分を責めることはありますか?  
13 以前と違って周りが怖く思えたり、周りから何かされそうな感じがありますか?  
14 ちょっとした物音にびくっとしたり、どこかから声が聞こえることがありますか?  
15 以前と違って、やたらに元気になり、よくしゃべるようになったり、買い物が増えたりしていますか?  

「はい」の数 ……/15

コラムのつづき

ひとつでも「はい」があったら・・・こころや体が疲れはじめています。次の方法を、いろいろと試してみましょう。 気分がすっきりし、
よく眠れるようになり、こころや体が元気になってくるでしょう。

• 仕事の合間に軽いストレッチをしてみましょう。
• 気持ちいいと感じるくらいの量の、運動をしてみましょう。
• ベトナムから一緒にきた人や、一緒にいて気持ちが落ち着く人に、
今の気持ちを聞いてもらいましょう。
• オンラインで、ベトナムにいる家族や友人とおしゃべりするのもいいでしょう。
• 好きな音楽を聞いたり、好きな本を読んだりしましょう。
• 自然がたくさんあるところに出かけてみましょう。春・夏・秋・冬で、自然がかわっていく様子を感じてみましょう。
• 夕食は、寝る2時間前くらいまでには済ませましょう。
• スマートフォンは、寝る1時間前くらいまえに見終えましょう。
• 寝る1時間前くらいまでに、ゆっくりとお風呂につかってみましょう。
• 朝は、できるだけ同じ時間に起きましょう。
• 朝おきたらまず、カーテンと窓を開けましょう。部屋が薄暗いところでしたら、電気をつけましょう。できれば外に出たりして、おひさまの光を浴びましょう。
• お酒をのむと、眠りが浅くなり、もっと疲れやすくなります。お酒やたばこに頼るのは、できるだけ避けましょう。

もし、これらを試しても「はい」が減らないときは、こころの専門家に見てもらいましょう。➡ 5.8をみてください
「はい」が3つ以上あったら・・・
あなたのこころは、とても疲れているようです。
クリニック・病院で、こころの専門家。つまり心療内科や精神科の先生にみてもらいましょう。お薬を出してもらえば、よくなります。

5. 8. こころの専門家に相談したいです。どこにいますか?

• まずは、会社の近くで評判のよい精神科/心療内科があるかどうか、会社の相談窓口に聞いてみましょう。そして、予約をとるのを手伝ってもらいましょう。ベトナム国内の相談窓口に連絡することもできます。
• 精神科/心療内科が近くになかったり、あっても予約が取れないときは、これまでにかかったことのあるクリニック・病院に行って相談してみましょう。専門家を紹介してくれます。
• また、各県には「精神保健福祉センター」があり、専門スタッフによるこころの相談窓口があります(無料)。日本語がわかる人に、下の【日本語の詳しい情報】 をみてもらいましょう。
• たすけてくれる日本語のわかる人がまわりにいないときは、【相談先リスト】にある窓口からベトナム語で相談しましょう。

ベトナム語での詳しい情報しく調べる!

日本語の詳しい情報!

夜間休日精神科救急医療機関案内窓口
夜や休日に受診できる精神科の救急医療機関を案内する窓口の一覧表です.

5. 9. こころの専門家にみてもらうのに、お金はどれくらいかかりますか?

• かかるお金は、からだの具合が悪いときに医者にみてもらうときと同じです(➡ 1.1をみてください)。
• こころの専門家のところに行って、しばらく通うようにと言われたら、一回に払うお金がもっと安くなる制度があります。「自立支援医療(精神通院医療)」とよばれます。市町村の役所に行って、担当の窓口で、安くする手続きのやりかたを教えてもらいましょう。

5. 10. ともだちからドラッグ(覚せい剤やマリファナなど)を勧められています。1回だけやっ てみたいのですが危険ですか?

• 覚醒剤やマリファナなどのドラッグを使うと、こころとからだの両方に悪い影響がおきます。周りの人たちも心配するでしょう。ほんのちょっとした好奇心から使い始めて、依存症という病気になり、やめられなくなる人がたくさんいます。誘われたとき、少しでも迷っている様子を見せてしまうと、また誘われてしまいます。誘われたときは、「きっぱり」断ることが大切です。断りにくいときは、その場から逃げましょう。逃げることも勇気です。
• 覚醒剤やマリファナなどのドラッグを使うと、日本の法律では、厳しい罰を受けます。罰として、会社を辞めさせられることも多いです。ドラッグをきっぱり断ることも、これまで使っていたのをやめることも、一人では難しいでしょう。勧められて迷ったら、または使ってしまったあとでも、すぐに相談しましょう。

5. 11. お酒が大好きです。運転や仕事の前に、ちょっと飲んでも誰にもわからないし、大丈夫 と思うのですが、よくないでしょうか?

• 仕事前や、仕事中にお酒を飲むのは、とても危険なのでやめましょう。機械の操作ミスなど、自分とまわりの人を危険な目にあわせやすいです。また、お酒が入って気が大きくなって普段はいわないようなことを言ったりなど、まわりの人を嫌な気持ちにさせたり、自分もあとから困ったりします。
• 日本では、どのようなアルコールでも、20歳になる前に飲むことは、法律で禁止されています。また、少しでもアルコールを飲んだら、何かを運転することはできません。自転車に乗るのさえ、法律違反です。
• アルコールを飲んだ人に車を貸したり、運転するとわかっている人にアルコールを飲ませること、アルコールを飲んだ人が運転する車に乗ることも、法律で禁止されています。アルコールを飲んで運転すると、運転免許の取り消しや会社を辞めさせられることもあります。
• お酒の飲み過ぎは、からだとこころの両方に悪い影響がおきます。お酒とは上手につきあいましょう。